第3話:勝てばビジホ負ければ健康ランド。一人旅のシビアな現実

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青森での初戦を終え、スロットでは何とか3千円勝利することが出来た。
しかし、現実は甘くない。
そこから容赦なく引かれるのが「宿泊費」と「飯代」だ。

1日のトータルを収支するとマイナス2千円
勝ったはずなのにマイナスという、厳しいスタートだった。

第1話で書いた通り、私の持ち物は下着と着替えが少し入った小さなカバン一つだけ。
移動手段は公共交通機関、そして基本は自分の足での「歩き」がメインだ。

ネットもスマホもない1991年。
青森駅前を歩き回り、ホールを一人で探すのは、想像以上に心細く孤独だった。

旅を続ける以上、毎日どうしても飯代と宿泊費はかかっていく。
このままでは、ただ勝ったり負けたりを繰り返しているだけで、いずれ軍資金が底を突くのは目に見えていた。

そこで私は、今後の命運を大きく左右する「ある残酷なルール」を心に決めた。

それは、「プラス6千円以下は『負け』とする」というシビアなボーダーラインだ。

タカ

生活費を引いても手元にお金が残る『プラス6千円以上』だけが、俺にとっての本当の勝ちだと。

ええっ!?
スロットで勝ってるのに『負け』扱いになるの!?ボーダーラインが厳しいね!

2日目から、私の「生きるために選んだ一人旅」には、超過酷なルールが出来上がった。

プラス6,000円以上 ならゆっくり休める【ビジネスホテル】
プラス5,999円以下なら雑魚寝決定【健康ランド】

目次

健康ランドで迎えた朝、再び「キング」へ

私が泊まったのは、地元の人にも意外と人気の健康ランドだった。
館内は人が多く、私が夜を明かしたのは、大勢の利用者がたくさんくつろいでいる休憩室の硬い床の上

他人のいびきの大合唱を聞きながらの浅い眠りの中、朝を迎えた。

時刻は朝6時。
大阪からの寝台列車の次は、健康ランドの硬い床の上か・・・。

タカ

疲れが全然取れてない・・・
今日こそは絶対に最低6,000円以上勝利して、ビジネスホテルでゆっくり寝るぞぉ!

読者

生きるために選んだスロット一人旅だもんね!
過酷だけど頑張るしかない、応援してる!

気持ちを切り替えるためにひと風呂浴びて、私は健康ランドを後にした。

目指せ6,000円、再び「キング」で勝負

私が決めたルールは6,000円以上のプラスを本当の「勝利」とすること。
1991年 当時、ビジネスホテル(ビジホ)の料金は一泊5,000円ぐらい。安いところだと4,000円ほどで泊まれるビジホが多くあった。
飯代を合わせても、贅沢をしなければ6,000円あればトータルでプラスになる計算だ。

健康ランドを出た私は青森駅前まで戻り、前日と同じ「キング」という名のホールへ向かった。

朝9時、開店と同時に昨日打った名機「スーパープラネット(スープラ)」の前に座る。

タカ

今日こそは絶対に6,000円以上勝って、ビジネスホテルで寝るぞ!

気合を込めて投入した投資1,000円目。
早くもスープラの美しい出目が止まり、REGボーナス!
出だしは最高のスタートを切ったが飲まれ、その後追加4,000円で待望のBIGボーナスを引き当てた。

総投資5,000円。

タカ

今日はいい感じだぞ!
このまま投資なしで出玉が増えれば・・ビジホに泊まれる!(笑)

読者

ビジホのふかふかベッドが見えてきたね!
そのまま突っ走れー!

しかし、スープラの一筋縄ではいかない荒波に遊ばれることになる。ボーナスは引くがまとまった連チャンにはならず、出玉が増えない。気づけば下皿のコインはダラダラと削られ続け、お昼前にはついにすべてのコインが飲まれてしまったのだ。

タカ

クソッ、全部ノマれた……。このまま続行か、それともやめるのか。どうする!?

読者

ええっ、お昼前にもう全ノマれ!?
今日も健康ランドになっちゃうよ・・。

いや、まだお昼前だ。総投資も5,000円とまだ少ない。
ここからなら十分巻き返せる。

タカ

俺は・・・何が何でもビジネスホテルに泊まるんだ!

6,000円勝利と出玉と時間の誘惑

お昼前にすべてのメダルが無くなり、私は追加投資を決めた。
まだ総投資は5,000円。焦る必要はない。
そう自分に言い聞かせて、財布から千円札を抜き出す。

追加の2,000円を投入し、総投資が7,000円になったその時、執念のBIGボーナスを引き当てた!

ここからスープラが頑張ってくれている。
順調にボーナスを重ね始め、私のドル箱にメダルが貯まっていった。
それから数時間、スープラの美しいリーチ目と優しい波に癒やされながら、ゆっくりと出玉が増えていった。
当時のドル箱は今のものよりかなり大きく、数時間打って箱の半分ほどまでメダルが貯まっていた。

ふとドル箱を見上げ、私は思った。
「今、ヤメればおそらくプラス6,000円前後はある。私が決めたルール上の『勝利(ビジホ確定)』だ」

タカ

時刻は15時過ぎ。まだ時間はたっぷりある。ここでヤメればビジネスホテルは確実だが、どうする・・・

読者

15時かぁ!
まだ夜まで時間あるし、調子良いなら追いたくなるよね!

今日のスープラは私の味方をしてくれているように見えた。
きっと大丈夫だ。ここで満足せず、さらなる勝利を目指そう。
さらに頭の中では、初めて訪れた青森ならではの別の妄想まで膨らんでいた。

タカ

青森といえば、やっぱり『ホタテ』だよな!
この調子で出玉が伸びれば、昨日駅前商店街を歩いている時に気になった、商店街の少し中に入った角で見つけた、500円で売られていた、青森名物『ホタテのバター焼き』が食べられるかも!(笑)

読者

本場のホタテのバター焼き(笑)
昨日から目を付けてたんだね!
500円ぐらいなら、勝って青森名物を一度は食べないとね!

しかし、パチスロの神様はそこまで甘くなかった。
あの時の判断を、私はのちに猛烈に後悔することになる。

さっきまでの優しい波が嘘のように、スープラが深い眠りについたのだ。
レバーを幾度となく叩いてもボーナスはこない。
気づけばドル箱の半分を埋めていたメダルはすべてノマれ、メダルは下皿だけになってしまった。

タカ

嫌な感じがしてきた。
私はまたやらかしたのか・・・。

現実は非情だった。
下皿にあった最後のメダルまでもが、綺麗さっぱりとスープラのお腹の中へ消え去ってしまった。

タカ

あの時ヤメておけばビジホに行けたのに・・。
何やってんだ俺。遊びなら全然良いが、これは生きるためのスロットだ。やはり判断が甘すぎる!

読者

うわあああ、まさかの全ノマれ・・!
ホタテのバター焼きどころか、ベッドまで消えたよ・・

時計を見ると、時刻はすでに20時。
今日の勝負はこれで終了だ。
残されたのは、ビジホを逃した絶望感と、メダルがすべて飲まれた虚しさだけだった。

今日もまた、あの他人のいびきが響く健康ランドの硬い床で寝るしかないのか……。
激しい後悔と重い足取りで、私はホールを後にした。

青函トンネルの誘惑、さらば青森

後悔しても負けは負けだ。
大阪を出てから、私の生きるために必要なお金はただ減っていくばかり。

「私は一体、何をしてるんだろうか・・」

パチンコ屋「キング」を出て、青森駅から歩いて3分ほどの線路沿いを、私はトボトボと歩き出した。
確か、今夜泊まる予定の健康ランドは、23時以降になれば深夜料金で安くなるはずだ。

それまでの時間つぶしのために、私は青森駅へと向かった。
23時までは、まだ後3時間くらいある。

青森駅の待合室のベンチに座り、私は激しく落ち込んでいた。
今後、本当にこのスロットの道で生きていけるのだろうか。
それとも、見知らぬ土地のどこかで野垂れ死んで人生が終わるのだろうか。

暗い未来ばかりが頭をよぎっていた、その時だった!
ふと見上げた駅の列車案内板に、「札幌」の文字が表示された。

このまま、ひと思いに札幌にでも行ってしまうかな?(笑)

タカ

【青函トンネル】
海の下を通って、北海道へ行く。すごいな!。
最初は冗談交じりで少し考えていただけだった。
しかし、考えているうちに、私の心の中で「本当に行きたい」という衝動がみるみる膨らんでいった。

読者

ちょっとタカ!!
遊びじゃないんだよ!
生きるために選んだパチスロ一人旅でしょ!
本当に行くわけないよね!?

タカ

すいませーん!
札幌まで座席指定で。

読者

えええーっ!?
本当に切符買っちゃったよ・・・!

さらに私は、窓口の横で見つけてしまった「あるモノ」に目を奪われた。
台紙付きで『人生の壮大な夢 青函トンネル』と書かれた、記念オレンジカードだ。

この記事のTOP画像に使っているのが、まさに当時私が購入した本物の写真です。

見開きの台紙の上段には美しい列車のオレンジカードが収まっており、下段には世界初の海底駅である「吉岡海底駅」と「竜飛海底駅」の姿が誇らしげに載っている。

生きるためのお金が減っていくというのに、青函トンネルのロマンが詰まったその魅力に抗えず、私は2,000円を支払ってその記念台紙を衝動買いしてしまった。

読者

ちょっとタカ!!
切符だけじゃなくて記念オレカまで買ってるじゃない!
本当に観光客になってるよ!(笑)

私が乗車する列車の名前は、夜行急行「はまなす」
22時55分に青森を出発し、約7時間かけて早朝の札幌へと向かう夜行列車だ。
料金は座席指定で1万円ほど。

本当は安い自由席もあった。
しかし、駅員さんが「あと510円多く払って指定席にすれば、グリーン車並みの席に座れるよ」と親切に教えてくれた。
だから私は、迷わず座席指定を選んだのだ。

読者

タカ!!
列車にどんどん詳しくなっていくね!
列車の勉強よりもっとスロットの勉強をしなさい!

タカ

私の悪い癖が出て、
また、勢いで行動してしまった・・・。

22時55分定刻通りと思いきや、列車接続待ちで10分遅れで出発。
青森駅を10分遅れで北の大地、北海道へと列車は進み始めました。

「明日の朝には札幌駅か・・・」
「俺、大丈夫か?」

ネットもスマホもない時代。
不安だらけの私を乗せて、夜行列車は真っ暗な北海道への線路を突き進んでいく。
今思えば、ただ青函トンネルを通りたいという理由だけで札幌へ行くなんて、まるでただの観光客だ。

しかし、私は引き返せない。
北の大地、北海道に望みを託し。
私の青森での生きるための戦いは、わずか2日間で幕を閉じた。

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